目指したのは、鎌倉の伝統に溶け込む古くて新しい空間
神社仏閣など歴史的建造物が数多く残り、多くの文化人が居を構えた鎌倉。そんな鎌倉の玄関口、鎌倉駅から徒歩5分の場所に、漫画「フクちゃん」で有名な漫画家・横山隆一氏のアトリエをリノベーションした複合施設「ガーデンハウス鎌倉」があります。緑豊かな空間にレストラン、ジェネラルストアを併設し、訪れる観光客や地元客の憩いの場となっています。
そんな施設を作るためのコンセプトは、横山隆一氏が過ごした当時の趣を活かしながら、訪れる人々の居心地がいい空間を演出することでした。そのために選んだのは、コンクリート本来のテクスチャーを活かした平板です。コンクリートが持つ風合いをそのまま活かした「ナチュラルストーン」に、表層に天然石を使用した「オーシャングランド」を組み合わせることで、シンプルで無機質ななかに柔らかく温かみのある印象を与えています。
エントランス部の飛び石は、コンクリートの質感の違いによって幾何学模様作り出し、自然との調和を生み出しています。またデザイン性もさることながら、600×600、300×600の大判サイズを使用することによって目地数を少なくし、歩行性も向上させています。
着色していないコンクリートのテクスチャーは、温かみのないクールな印象を持ってしまいがちですが、実際には、緑豊かな庭、地産地消の料理、人々が楽しむ会話を引き立てる空間を演出してくれます。
築50年のアトリエが生まれ変わって誕生した「ガーデンハウス鎌倉」。さらに歳月が経てばこの憩いの空間も、地域の人々に愛され、鎌倉という歴史ある環境に溶け込んでいくでしょう。そのとき、庭の緑が育っていくように進んでいくコンクリートのエイジングが、味わい深い空間作りにひと役買っていることを願っています。